ソニーからα7sのISO感度40万越えが如何に驚異的かを示す動画が公開され話題を集めている。
これは確かに凄い。真夜中の海岸でたき火を囲んでいると、人間の目は揺れ動く炎が作り出す陰影や表情を豊かにとらえることができる。しかし従来の撮影機器では人間の裸眼並みの豊かな表現で捉えて保存・再現することは非常に困難だった。α7sがあれば誰でも簡単に裸眼に肉薄する表現力を手にすることができるのだ。
それではカメラの最大手でプロカメラマンが常用するニコンやキャノンはα7sの出現で王座を去ることになるのか?
いや、そんなに甘くはない。ニコンやキャノンのフラッグシップ機はソニーのα7sに肉薄する感度を持っている。具体的に数値で比較すると以下の通りだ。
拡張感度での比較:
Sony α7s・・・・・・・・・・50~409,600
Nikon D4S・・・・・・・・100~409,600
Canon EOS-1D X・・・100~204,800
常用感度での比較
Sony α7s・・・・・・・・・100~102,400
Nikon D4S・・・・・・・・・100~25,600
Canon EOS-1D X・・・100~51,200
拡張感度とは複数ショットの合成を含む映像処理技術を駆使した感度であり、当然リアルタイムではなく、真実の一瞬を捉えたものとは言えないが、悪条件での撮影を何とか可能とするために、高ければ高いほどよい。
重要なのは常用感度であり、通常の使用において更に重要なのはノイズが殆ど無い状態で使える推奨使用感度だ。
常用感度が4倍(絞りで2段階)違うということは、例えば、天候によるが300㎜望遠をF16で手持ちでブレずに「写せる」か「写せない」の差を生む状況で勝敗を決定づける。長年ニコンに信奉してきたプロカメラマンたちは、これをどのように感じているだろうか?
私は中学時代にニコンを買ってもらい、ベトナム戦争をニコンで撮ったアメリカ人報道写真家の真実の写真をライフ誌で見続けて育った生粋のニコン信奉者だが、定年間近にソニーRX-100という最高傑作のコンデジに出会って、カメラメーカーの序列が白紙になったと感じた。
もし私がシリアスなカメラライフを送るとすれば、ソニーの驚異のコンパクトフルサイズRX-1をポケットに入れて、自分の視野と感性を35㎜画角に合わせて生活し、それ以外の画角が必要な場合のために50~200㎜+の望遠ズーム(できれば小型)をぶら下げて歩くことにすると思う。その場合は、当然ニコンかキャノンのフラッグシップ機にするはずだったが、今やα7sがベターチョイスと言えるかもしれない。悪条件での特に望遠側での撮影は実用感度が高ければ高いほど良いからだ。
結局、キャノンとニコンの最後の砦はレンズ群であり、これがプロカメラマンが現在ソニーではなくニコン・キャノンを使う理由である。一方、ソニーの強みは画像処理技術でニコン・キャノンと少なくとも同等の技術があり、撮像素子で世界制覇する能力を持っているということだ。
ソニーはミノルタ(ロッコール)の卓越したレンズ技術を獲得済みだが、レンズメーカーとしてのインフラやブランドイメージではニコン・キャノンに現状では全く太刀打ちできていない。当面の戦法としては、小型高性能な望遠側ズーム(α7sの強みを生かせる部分)に的を絞って信頼性の高いレンズを自家製造する一方、それ以外の部分では徹底的にカールツァイスを採用するのが、ニコン・キャノンから見てもっとも嫌かも知れない。
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